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健やかに美しきミックスベイビー達

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「さあ、自己紹介の表現を練習しましょう。」
「『私はアメリカ人です。名前はジョンです。ハワイ出身です』
ハイ、繰り返してください!」
ある日の初級日本語教室での事。こんな練習を始めた所、一人の学生さんが、ちょっと困った表情を作って「先生!」と手をあげました。(ハイ、雑職の私は日本語教師もしました。)
「私はジャパニーズです」と、そのすんなりとした金髪美女の学生さんは言います。
「ん?」
「私を育ててくれた『バアチャン』は和歌山から来たんです。日本人だった最初の夫が早死にして、フィリピンとポルトガルのミックスの爺ちゃんと再婚したんです。それから母はドイツとノルウェーの混血の父と結婚しました。でも、私は中身はジャパニーズです。」

 

「ジャパニーズ!」と宣言する彼女のヘイゼルカラーの目を見ながら、そうだ、ハワイの人は自分のルーツをそういう風に言うんだったなと思い当たりました。

 

「僕はチャイニーズだよ」という人が、一度も中国に行ったことのない4世5世だったり、「何世代もハワイアン」という人がハワイ語ができなかったり、この学生さんのように、逆さまから見ても日本人には見えない人が、堂々と「育ててくれたのは、日本人のおばあちゃん、私は根っこからジャパニーズよ!」と言ったり。

 

ハワイの人達は、自分のルーツをしっかり持っているけど、そのカルチャーの混合をとっても誇りにしていて、同時にハワイの人間という意識を強く持っているように思います。自分達を指して、あまり「アメリカ人」とは言わないんですね。いろいろ混じったエスニックのルーツで自分達を表現し、夫々のいい所を上手にミックス、最後はまとめて自分は「ハワイのローカル」と、言い切っているように思いますが、どうでしょう、ハワイに住む他の方たちのご意見や経験も聞きたい所です。

 

動物だって、ハワイに来るとハワイローカルのミックスになるようです。
その一つの例がシーライフパークで生まれたというWholephin。ウォルフィンは、メスのドルフィン、オスのフェイクキラークジラというカップルから生まれました。人工授精とかではなく、一緒のタンクに入れておいたら、この「人種」が違うカップルが、自然に「できちゃった」らしいのです。ドルフィンもクジラも同種系に属しているから自然界には、たまにある現象らしいですが、人間が観察できる飼育状態でこうしたミックスベイビーが生まれるのは、世界でも珍しいそうです。

1985年5月に生まれたウォルフィンちゃんは女の子で、Kekaimalu(平和な海からやってきた“from the peaceful ocean”)と名付けられました。興味深いのは、パパとママと両方の特徴を上手に取って生まれてきた所です。見た目はドルフィンぽいんですが、肌は普通のイルカよりずっと黒っぽくってクジラ色。クジラ語とイルカ語が通じたのか、海ピジョン語で交流できたのか。パパママどっちからも、「顔は絶対私に似てるわ」「これはお前、俺のお袋の肌の色だよ」なんて言わせていたのでしょうか。

さらに、びっくりなのは、66本の歯を持って生まれてきたところです。ママのドルフィンが88本の歯、パパのクジラが44本の歯だったと言いますから、66本の歯を持つミックスちゃんは、ちょうど真ん中をとって生まれて来た事になりますね。子供なりに、えこひいきなく生まれてくるんで、一苦労したんでしょう。動物界にも、メス馬とオスロバのミックスで、ラバがいますが、こうした雑種は生殖能力がないというのが定説です。ところが、海の中のミックスベイビー、その後は何度かドルフィンのボーイフレンドを持ち(性格は異種混合に挑戦の冒険イルカのママ系だったようですね)、ついには、クジラ4分の1のミックスグランドベイビー達も生まれてきたそうです。現在、ハワイのシーライフパークにいるカウィリ・カイというドルフィンは、立派なローカルのミックスベイビー、生き残ったお孫さんの一匹に当たるそうです。

 

人間も、クジラもイルカも、ハワイでは、とにかくミックスベイビーたちが主流です。神様が、「隔たりなく混じれ」とおっしゃったのでしょうか。

 

かつては、「日本の男はのぉー、日本人の嫁をとれや」と繰り返した移民のお婆ちゃん達なんかもいました。写真花嫁の時代ですね。しかし、ハワイでそんな事を言っていると、嫁さんをとりっぱくれる、家庭を持てなくなる。学校に行けば、人種が溢れているクラスルームです。中国、フィリピン、ヨーロッパ系、プエルトリコ、ポルトガル、ポリネシア系、自然と人種を超えた、いや、人種なんていちいち言っていない世代が、ハワイの人々の主流になってきました。そして、そのミックスのベイビーたちが作る社会には、美しくまたハッピーな人がいかに多いことか。余談ですが、「アメリカ一幸福な男」と呼ばれたアルビン・ウォングさん(ニューヨークタイムス、2011年3月5日*)も中国系でありながら、ユダヤ人と結婚してミックスベイビーを生産したホノルルのローカルです。

 

「雑種」と呼びたければ、勝手に呼んでもらいましょう。健やかなハワイのミックスベイビーたち。大丈夫、大丈夫。生殖能力問題なし、人生を、自然を楽しむ能力は、、アメリカ一、世界一なんですから!

 

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シーライフパークのウォルフィン。 Image from (http://amazef.blogspot.com/2014/04/a-wholphin-actually-exists.html

*注:ギャロップ調査によれば、幸福なアメリカ男の条件とは、「背が高いアジア系でユダヤ教の信仰者、子供のいる既婚者でビジネスを持ち、年収12万ドル以上の65歳以上、そしてハワイに住んでいる」という事だそうです。

 

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