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ハイク・ステアーズ(天国に一番近い階段)

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Haiku Stairs

ハワイのホノルルには、天国に一番近い階段があります。
その名も「stairs to Heaven」

この階段は、もとは太平洋戦争中機密のラジオタワーに通じる階段でした。敵国(日本のことです)の接近をいち早く察知し、太平洋に散在する米海軍の戦艦と交信するための重要軍事施設。コウラウ山脈の峰に沿った危険な場所に、4000段近く(正確には3922段)、高さにして2820フィート(約850メートル)の直滑降の階段が設けられました。作った人達もすごいです。このラジオトランスミッションタワー、古いレーダー受信用アンテナは、今でもノスタルジックな雰囲気を持ったまま建っています。

 

 

階段の各地点から見る絶景は、息をのむばかり。天国に通じるというより、すでにもう天国に到達してしまったのではと思えてしまいます。しかし、足もとを見ると、左右は両側とも、血の気が引くような絶壁です。一足踏み外せば、あの壁のようなハワイの山から転げ落ちること間違いなし。熱帯植物におおわれた階段は、たとえレールがついていても、いつズボリと足が落ちるかわかりません。高所恐怖症の人には絶対無理な場所です。

 

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ハワイ州担当局は30年近く前、あまりにも危険との判断で、老廃状態の階段を閉鎖し、今後は立ち入り禁止としました。しかし、ダメと言われると行きたくなるのが、人間というものですよね。それも天国に通じていて、地上にいては味わえない最高のスリルが待っていると思うと、この場所を訪れるハイカーは後を絶ちません。今でも禁を犯して上ったはいいが、降りて来れず、ヘリコプターで救助を頼む人が年間10人以上もいるそうです。それに当局に正式に見つかると罰金は1000ドル、それでも行きたいのが人情。何でも行きたい天国への階段。名前もとってもロマンチックです。

 

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その一人、A君。将来はコンピュータプログラマーを目指すという20歳の学生さんです。勉強している以外、毎日でも欠かさないというハイキング大好き人間。

「オアフではどこが一番好きなコース?」という質問に即座に

「Stairs to Heaven」と応えてくれました。

「閉鎖されている」「行ってはいけない禁断の場所」というのが、若者の意欲を一層くすぐるようです。昔から禁断の木の実は最高の美味と言いますし。

「危なくないの?」という質問には、ニンマリと笑って足の脛やら腕についたひっかき傷を見せてくれました。朝は3時半起き、真っ暗なうちに家を出てカネオヘ方面へ向かいます。人がまだ寝静まっていて、ガードの人も出てきていないうちにこの階段ルートに挑戦するため、暗闇の中で竹藪だの、木の枝だので腕も足もあちこち傷だらけ。でもそのスリルが何とも楽しくてたまらないというのです。

この天国に通じる階段、本名は「ハイク・ステアーズ」と言います。絶壁から眼下に箱庭のように見えるのはハワイのハイウエイ3.「ハイク」というはハワイ語でイクという花の名前のことだそうで、日本の松尾芭蕉さんなどには無関係です。

さてこの禁断の天国への抜け道に、最近、誰かがブランコを取り付けてしまいました。階段の頂点、人がやっと一人通れるような場所のすぐ近くに立つ鉄さびの出た二本の柱、そこにブランコができてしまったばかりか、危険な場所のブランコに挑戦して、ソーシャルメディアに掲載する人たちが続出。ブランコに乗った人達の様子はフェースブックで見ると、まるでそのまま鳥になって飛んで行ってしまいそうです。地元のメディアもさっそく、ブランコのニュースをとらえ、賛否を巡って喧々諤々の討論。さすがに死人が出る前に天国に近いブランコは撤去されることになったそうです。

実は私はこの天国への階段に挑戦しかけて、挫折した経歴あり。不法なことはしたくなかったというと善良市民に聞こえますが、本当は、本当に怖くて足がすくんで、途中でくじけただけです。メキシコのチチェン・イッツア遺跡に勇敢に登ったのですが、降りて来れなくなった昔の恥を思い出し、ヘリコプターで救助だけはみっともないから止めようと思った次第。年齢とともに、これでも少しは智恵が付いたんです。危険なスリルを楽しむのは、若者にお任せすることにして、姐御は写真を楽しませていただくだけにいたしましょう。

 

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photos contributed by A.K.

 

*この記事は、ハイク・ステアーズをお勧めするものでは決してありません。ハワイ州から、危険地域と指定されクローズされているエリアですので各個人の責任を持って行動するように。

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