ハワイの雪
Hawaiian Snow
ハワイで「初雪」を見たのは、ハワイ島の南端近くパホア地区の鄙びた海岸でした。
火山から昔流れ出た溶岩流、行きついた先が太平洋の大海原という風光明美な場所です。車が10台ほど停車できるよう整備された小さな公園の片隅でのことでした。初雪と言っても、チラチラ空から落ちてくる初雪というのではありません。ローカルのお兄さんたちが好んで乗るピックアップトラック、たいてい大型犬が一緒に1-2匹乗っているやつですね、そのピックアップトラックの後ろに、無造作に雪が積まれておりまして、たぶんそれで積んできたんであろうと思われるスコップも、そこには2本勇敢に突き刺さっておりました。雪は水分を多く含んでいるようで、かき氷のような状態になっているようでした。
そこは、地元の人たちがホットポンドと呼ぶ海水入りの自然温泉のある地域のそばです。パパイヤの林を超え熱帯林を通り過ぎて行ったところにあります。4-5人のローカルの若者たちが、そのかき氷入り乗せトラックの回りで楽しそうに集っておりました。もちろん全員上半身は裸、下は海水パンツといういで立ち。彼らはトラックの後ろの雪を丸めて、なんと雪合戦をしているのでした。裸の肌にかき氷雪玉がビチャッと当たってちょっと痛たそうですが、若者たちは楽しくてたまらないというように大騒ぎをしています。
ハワイで雪合戦が見られるとは、それも、溶岩原とパパイヤの向こうにある公園の高い椰子の木の木陰で、半分裸のサーファーボーイたちが投げ合うかき氷戦。これってどうなっているんでしょう。
「その雪、一体どっから持ってきたの?」と、たまたま通りかかってこの光景を目にした私は興味津々で聞いてみました。
私の質問を聞くと、背の高いポニーテールのお兄さん一人がにっこりと笑って、遠くのマウナケア山の方を指さします。
「ペレに恵んでもらって来たのさ」
ハワイ島にはマウナケア山とマウナロア山、マウイ島のハレアカラ山があり、この3山では実は毎年何度も雪が降るのだそうです。ハワイと言えば、常夏のビーチと思っている方は、ハワイでもスキーができる、いや雪合戦もできると聞けば、きっと驚かれることでしょう。去年2015年の6月にも大雪が降り、宇宙天文台のあるマウナケア山頂は、零下の低温を記録しました。確か1.5インチ降り積もったと新聞でも読みました。火の女神ペレは、雪ももたらす神様だったんですね。
「ちょっと触らせてもらってもいい、ペレの雪?」
誘惑に勝てず私はお願いをしてみました。
「いいよ~!もちろんだよ!ゴーアヘッド!」
さわやか青年たちは、アッという間に溶けてしまう雪玉を、ピョンピョンと飛び超えながら言います。
ピックアップトラックの後ろの雪は、手を差し込むととても冷たくて、かき氷ではなく、本物の雪のままでした。よく見ると、スコップと共にビール缶やソーダ缶も冷たく冷やされています。気難しいペレ神だといいますが、人間のイケメン若者も大好きだとか。私もお相伴にあずかって、マウナケアのハワイの雪を楽しませてもらいます。すると、ベチャッ!誰かが投げた雪玉が私の背中に命中。それでも腹がたたないのは、人間のオバサンもイケメン若者が嫌いじゃないからなんでしょう。
Photo: マウナケアとマウナロアに積もるハワイの雪 source: https://weather.com/news/news/snow-summer-storm-hawaii
スポンサーリンク
この記事へのコメントはありません。