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シャングリラ美術館(ドリス・デューク邸)

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Doris Duke’s Shangri La

デューク邸

 

世の中には富裕層と呼ばれる、限りなくお金に恵まれた人たちがいます。ハワイに「シャングリラ」と呼ばれるこの世の桃源郷を打ち建てたドリス・ドュークもその一人。ドューク大学を創設したタバコ・電気業界王ジェームス・ドュークの娘として生まれ、21歳で社交界にデビューした頃には「世界一裕福な娘」と呼ばれた女性です。その華麗な生涯は、アメリカのあちこちに慈善家、美術収集家、園芸家としての名前を残しています。とてつもない大富豪、そして英知と美貌に恵まれ、有名人との情事にも事欠かず、諺に関係なく、天が2物以上を与えてしまった世にも幸運な女性です。

 

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ここハワイの高級住宅地カハラ地区に建つ旧ドリス・ドューク邸は、今ではホノルル美術館とドリス・ドューク財団が共同で、予約制の限定ツアーを行っています*。ドューク邸は、外から見るとその華麗さ、豪華さ、こだわりを推し量ることはできません。大富豪ドューク女史がこよなく愛したというラクダが守る入口の前に立っても、一見するだけでは、ハワイの他の高級住宅とそれほど違うようにも見えません。

 

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所が一歩、エジプトからやって来た重いドアを押して入った途端、そこは文字通り、目を見張るような別世界が広がっているのです。ハワイに忽然と建ったイスラム美術の極致。それも、イスラム世界からは地球半分以上離れたハワイというこの世の楽園に広がるその贅沢さ。青や黄色のモザイク、タイルが、趣味よく配された邸宅に足を踏み入れただけで、世界の工芸家たちが粋を極めて作り出した物たちが、惜しげもなく集められた場所であるのかが、肌に伝わってきます。金に糸目をつけないとは、まさにこのこと。美しいという言葉だけでは足らない世界。外に広がるのは紺碧のハワイの海。この世の理想郷とは何と適切な名前でしょうか。

 

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アメリカはやっと世界恐慌のどん底から回復しつつあった1930年代、20代のドリス・ドュークは、やはり大富豪の最初の夫ジェームス・クロムウェルと、世界中を巡る新婚旅行に出発します。この旅でインドのタジマハールを訪れ、インドのイスラム教モーグル文化と美術に触れたドューク。新婚旅行の最後の寄港地であったハワイを訪れた時、この天国の地にイスラム美術の粋を集めた住居を建てる決心をします。東海岸のロードアイランドやニューヨークマンハッタンにも豪華住居をもっていたドュークですから、ハワイは冬の別荘というところですね。ドュークが26歳時で完成した建物は、その後少しずつ世界中から選りすぐった美品を加えて、シャングリラと呼ばれることになります。

 

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ドューク女史自らが、桃源郷と呼んだ別荘が、女史にとって特別な場所であったのは、一部屋一部屋、壁の一つずつ、各部屋の天井のデザイン、化粧室やゲストルーム、庭園の構成に至るまで、彼女自身が考えたこと。デザイナーに任せたのではなく、モロッコの職人、エジプトのカーペット、シリアの装飾品と、自分が納得するものだけを、時間をかけ、金を惜しむことをせず、一つ一つ収集を続けて行ったことにあります。イスラム美術に魅されたドューク女史でしたが、自分が回教徒となることはなかったと言います。しかし、イスラムの工芸美術への愛は、自らタイル削りの埃にまみれて一つ一つのタイル選びまでしたという、執着ともいえる面に現れているようです。

極めつけは、ドューク女史の寝室とパウダールームに入った時。最近やっとリノベーションが済み一般公開になったという邸の一角にありました。人工的に作られた中庭には、熱帯植物に囲まれた滝が流れ、トロピカルプラントの園芸が品よく配置されています。大富豪の女性というのはこういうところで寝ていたんですねえと思いながら参観を続けたのですが、そのパウダールームに入った途端、息をのみました。きらびやかでありながら、落ち着いた化粧室、サイドルームの品のよさ、ハワイの太陽が優しく差しこむプライベートな空間。豪華さと穏やかさが静かにマッチしたこの世の最高のトイレ。王様でもお后様でも、こんな場所で用を足すことはできなかったでしょう。

ハワイのオリンピック水泳選手でサーフィング王ドューク・カハナモクとも情事のあったというドューク女史。恋人たちがこのプライベートな空間を女史と共有したこともあったのでしょうか。

ハワイ旅行の前にぜひ予約を。ホノルル美術館から貸し切りバスに乗って15分。この世の楽園で、本物の桃源郷を訪ねてみてください。

 

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*ドリスドューク邸「シャングリラ」ツアー。予約(英語808-532-3853)でのみ可能です。

ツアー参加費$25.http://www.shangrilahawaii.org/

 

Photo Credit: Daniel Barker Photography

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