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Night Marchers(ハワイの夜の亡霊たち)

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私の友人にサイキック能力の強い女性がいます。気の毒に彼女は、小さい頃からいろいろ見えてしまう人でした。見たくないモノも、見ない方がよいモノも見えてしまう、困ったもんです。例えば、彼女が友達とハイキングをしています。山を登っていると、時々下りてくる人とすれ違う事もありますね。「今の人、バックパックも持たないで降りてきたねえ」と言うと、何も見えていない仲間は、不思議そうな顔をして「え?誰も下りてこなかったよ。誰のこと?」

 

こんなこともありました。交通量の多い交差点。信号が長く、なかなか渡れないので、いつもこの友人が立ち止まって待つことが多い場所です。いつの頃か、交差点の角の所に小さい男の子がチョコンと座っているのに気づくようになりました。「あんなとこに座り込んじゃって、危ないな」

時たま一緒に歩いていた家族などに「あの子、よくあそこに座ってるけど、危ないね。親は見てないのかな」と言うと、結局見えていたのは、彼女だけだったという話。その交差点で亡くなった小さい男の子の亡き姿であったのでしょうか。

私はこの友人とオフィスの同僚であったため、時々リクエストをされることがありました。

「ユカリさん、すみません、またトイレに一緒に行ってもらってもいいですか。誰か一緒にいると、出ないようなので」

 

彼女が一人だと、「お出になるモノ」があるらしいのです。彼女がトイレで手を洗っていて、ふと顔を上げて鏡で自分の顔を見ると、鏡に映っている男性がいます。はっとして後ろを振り向いてみると、あるのは洗面所の壁だけ。鏡をもう一度見ても、勿論もう誰も映っていないと、そんな経験があるからなのでした。初めは私も一緒にぞっとしていましたが、そのうち慣れて、トイレね、はい、一緒に行きましょう。

 

この友人が思春期の頃、よく見た夢がありました。それがとってもリアルな夢です。その頃友人の一家は、川の側に暮らしていたのですが、夜な夜な甲冑を付け武器を持った落ち武者らしき軍団が、友人の部屋の一方から入ってきて、もう一方、川に面した窓の方から出て行くという夢なのです。甲冑のガサゴソいう音、何かを引きずっているような音、重い沈黙が、友人の寝ているそばを通りすぎます。体はカチコチ、いわゆる金縛り状態になっているので、動きません。この夢を見る度に、夢だ夢だと思っていたのが、いつの頃が、友人は本当に見えている事に気がついて愕然としたという事も話してくれました。つぶっているつもりの眼はしっかり開いていたんだ、と。これは日本は多摩川沿いでの話。

 

この友人の話を聴いた時、私はハワイのナイトマーチャーズの伝説を思い出しました。ハワイのナイトマーチャー達も、昔の戦いで敗れた勇者たちです。夜になると墓地または埋葬された場所から、ドシンドシンと行進をして出てくる、それも海を目指して真っ直ぐ行進するというのはハワイらしい。途中建造物や木などがあっても、彼らはス―イと通り抜けてしまうという事です。

 

「初めは遠くからドラムの音が聞こえてくる。そして、多くの戦士たちが口づさむチャントも聞こえる。それは霧の多い夜、または、大雨、高い波、強風の夜である事が多い。どこからかかび臭いようなにおいが漂い、うすぼんやりとした闇に松明の光が見え隠れする。彼らは大きな声を出しながらやってくる」と、ハワイの幽霊談の著者カパヌイ氏は、ナイトマーチャーズ出現の様子を伝えます。

 

ナイトマーチャー達は、ハワイの甲冑をまとい、顔は戦いのマスクで覆われています。ハワイの古強者たちの亡霊は、私の友人のような特別な能力がある人だけに見える存在ではないようで、特定の夜、特定の場所に多く現れ、私やあなたのような普通の人にも見えるようです。しかし、ご用心。ナイトマーチャーズに遭遇し、彼らが近づいてきてしまった場合、ハワイの言い伝えでは「決してマーチャーズの顔を見るな」と教えます。ナイトマーチャーズだと思ったら、自分の顔を下に、うつぶせになって地べたに這いずる、これがナイトマーチャーズを怒らせないやり方です。中には素っ裸になってうつ伏せになれというやり方を推奨する人もいます。理由は不明。ハワイには家の周りにティーリーフを沢山植えている所が多いですね。これはナイトマーチャーズも含めた悪霊たちに悪さをされないよう、守ってもらうためです。アパート住まいの人も、数本ティーツリーをポットに入れて置きましょう。万が一という事もありますから。

 

ナイトマーチャー達には、お気に入りの行進地がハワイ各地にあるようです。オアフ島のパリハイウエイ、ハワイ島の聖地ワイピオ谷、カウアイ島の殺戮が行われたというカナぺぺ、マウイ島のカハクロアなどのヘイアウなどが、ナイトマーチャーズの頻繁出没地。ハワイの子女の為のカメハメハ校のあるカリヒ谷の近辺でも、ナイトマーチャーズが頻繁にみられるという事ですが、真偽のほどはわかりません。

どこの文化でも、幽霊のお話は皆大好き。怖いモノみたさ、超自然な現象への好奇心は、どこの国にもありますね。私の友人のように、見なくてもよいモノが見えてしまうのは、これまた苦労の多いこと。側で見ていてよくわかりました。とは言っても、理由あってお出になってしまったモノ方には、ハワイのナイトマーチャーズでも平安日本の落人達でも、「お邪魔はしませんから」と静かにお引き取り願い、今生の生活に戻らせていただく事にいたしましょう。

 
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