ハワイで散骨(Hawaii Ash Scatterings)
先日黄昏時のカイマナビーチを歩いていると、普通のビーチ客とはどこか違う一群に出会いました。その雰囲気に押されて、こちらもひそひそ声で聴いてみると、沖合の散骨式を眺める人々だとわかりました。
確かに、沈む夕日を背景に散骨用のボートが見えます。ボートに乗って出られる人数は限られているためでしょうか、友人や同僚、近所の人々などは、ボートの見えるビーチから、遠方参加をしているのでした。熱帯植物で作った小さなティーリーフ船に故人への思い出の品を乗せて沖合に流したり、色とりどりのレイを海に流したり、ただ静かに海のかなたを眺めている人たちもいました。
この散骨式を見た後、散骨場所としてハワイがトップの人気という記事を発見。ハワイが大好きなのは、生きている私達だけに限らないんだなあと思いました。散骨といっても、もちろん遺骨をばら撒くわけではなく(それはコワイ!)、火葬にした後の遺灰を海に撒くわけです。
例えば日本からハワイに遺灰を持ち込みたい場合、遺灰をパウダー状にしてくれる葬儀の専門家もあるそうです。大切な人の霊を悼むこの弔いの方法に、ハワイの海を選ぶ人がダントツに多いのだそうです。「死んだらきれいな海に遺灰を撒いて欲しい」と言い残していく人も、また家族が海を愛した故人の遺志を組んで、散骨を実行する場合も、母なる海、美しい自然に帰りたいと願う人の間で、ハワイが大人気であることが分かりました。散骨をすることで、大切な人たちが思い出の海の一部になり、海を見るたびに遺族はその思い出を新たにできるわけです。さらに散骨式の後は、親戚一同でバケーションもできちゃうし。
日本の有名人の中にも、ハワイの海に散骨した人には、勝新太郎(ワイキキ沖)、立川談志(ハナウマ湾)、そしてプロサーファーの飯島直樹(オアフ島で散骨)などがいるそうです。
たった38歳で亡くなってしまったIzことイスラエル・カマカイイオオレの遺灰も、オアフ島西部のマクアビーチの海岸で散骨されました。What a Wonderful World! やSomeday Over the Rainbowなど、心を揺さぶる歌を残したIZ。その「ハワイの声」の死を悼んで、サーフボードやボートに乗って、または泳いで、散骨に参加した1万人もの人々のことを、覚えている方もいるでしょう。
遺灰を海に撒くというのは、ハワイでは近年になって始まった風習のようです。古来からハワイでは肉体、特に骨にマナが宿ると信じられていました。したがって、古代ハワイの埋葬法は膝を立てた姿勢の遺骸をタパ布に包んで、洞窟などに埋めたといわれます。海葬をしたのは、洞窟に行くわけにいかなかった船乗りたちの葬儀に限られていました。遠距離航海中に亡くなったハワイ人は、赤い布に包まれて、そのまま海に、ボチャン。赤い布を撒いたのは、遺骸が鮫に食べてもらえることが大切であったため。(そういえば闘牛も赤い布だったけど)。首尾よく鮫のお腹に入ってくれた故人の霊は、航海を続けていく元仲間の船乗りたちを守ってくれると信じられていたのです。ちなみにハワイでは、鮫は火の神ペレ神の兄弟でカモホアリイと呼ばれており、人間にも鮫にも神様にも変身できるパワフルな神様です。鮫に食べてもらえるのは、故人としては栄誉なことであったようです。
鮫やお魚たちの一部になって、海藻のように永遠に漂うことのできる海のお墓。とてもロマンチックではありますが、実行する場合遺族の方がた、散骨の場所にはご注意ください。ハワイ州法では、子供たちが泳いでいるような海岸、いや、陸地に近い場所での散骨は御法度です。最低でも3マイル(約5キロ)は沖合に出て、散骨しなければいけないという規則があります。BBQの残りの灰を撒くように、どこの海岸でも遺灰を撒いていいわけではありませんので、十分ご注意を。
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